★シェルブール停電事件

(1980年04月15日)

工場はすでに機械の運転準備を進め、
あと十分後には
プルトニウムを大量に処理しはじめよう
という時刻を迎えていた。

この工場こそ、
ほとんど全世界の原子力発電所で発電用に使われ、
死の灰の塊と変った燃料を一手に引き受ける、
恐怖のラ・アーグ再処理工場である。

恐怖……それは
巨大原子炉の大事故、チャイナ・シンドロームさえ、
足もとにもおよばないおそろしさ。

すでにこの工場が抱えこんでしまった死の灰は、
それが外にあふれ出たなら、
この惑星の全生命が
一瞬にして静止するであろう。

そのあとに訪れるのは、永遠の静寂、
死の世界である、と言われていた。

そのような工場が
この地球上に存在し、
ほとんどの人間が
それを知らずに生涯を送っている。

フランスの文学者も、哲学者も、
口角泡を飛ばしながら、
その世界を知らずにいた。

これはどの奇異、
これはどの不思議があろうか。

だが、事実だった。

パリとロンドンの鼻先、
ノルマンディーの港町に、
この工場が横たわっている。

その朝の時刻に、
いきなり工場の電気が
パタリと止まった。

一斉に、すべての電気が
切れたのである。

工場内に、
血の凍るような戦慄が走った。

http://birthofblues.livedoor.biz/archives/51287091.html

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