西浦教授「数字が独り歩きをしてしまった。」(何もしなければ42万人死亡との推計で)

(2020年06月03日)

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西浦×國井 対談「日本のコロナ対策は過剰だったのか」

日本の新型コロナウイルス対策は過剰だったのか。

本誌は、
数理モデルを用いて対策に当たった
北海道大学教授の西浦博と、

感染症対策の第一人者でスイス在住の
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)に
対談を依頼した。

2人の専門家が語る、
日本が取った対策の根拠と
今後に向けた課題とは。

(対談は5月26日。聞き手は本誌編集部・小暮聡子)

「被害想定は不可欠なので、
あの発表は
しなければならなかった」

編集部

日本の実効再生産数の低さについて言うと、
西浦先生は
今号の寄稿論文で
個体別異質性に言及している。

日本で感染者数が少ない要因として、
何らかの異質性は分かっているのか。

西浦

2次感染に関する異質性と、
重症化するかどうかの異質性の2つがある。

前者の典型例が、
「3密」のような環境に依存した異質性だ。

また、年齢で言うと、
高齢者が感染したほうがうつしやすく、
2次感染が起こる傾向があると分かってきた。

重症化については、
アジアの人の一部は
サイトカインストームという、
重症化につながるサイトカイン
(免疫系細胞から分泌されるタンパク質)の放出に関わる遺伝子に
一部変異がある、ということも
科学者の間で
最近言及されるようになってきた。

國井

世界的にロックダウン(都市封鎖)や
外出禁止などの強硬策がなされたが、

死亡率が高い国は
やはり高齢者や基礎疾患がある
ハイリスク層に拡大した。

今後集中すべきは、
このハイリスクの人々、
またホットスポットとなる
医療機関や高齢者施設などを
どう守るかだ。

編集部

国民全体に対して、
何もしなければ42万人が死亡する
と言われて皆びっくりしてしまい、
接触削減とともに経済が止まった、
という批判もある。

悲観的な予測によって生じた
経済的犠牲が大き過ぎる、と。

西浦

この流行の本質は
接触を止めないといけないものであり、

それに伴う経済的な影響があるのは
政策判断を下す政治家たちも
認識してきたことだと思う。

しかし、行動変容には
被害想定は不可欠なので、
あの発表は
しなければならなかったと思っている。

オーバーリアクトではなかった。

ただし、
別記事(本誌18ページの寄稿論文)にまとめるが、
数字が独り歩きをしてしまったというのはそのとおりで、

コミュニケーションの点では、
流行対策をこうすれば数字は下げられる、
という点を
ちゃんと伝えなければいけなかったと思う。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93561_3.php

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