書面表示の議論、慎重に 改正案、家族承認で臓器提供可<解説>

(2004年02月25日)

008812004年02月25日夕刊2総合00200645文字 自民党調査会の臓器移植法改正案は、臓器提供者本人の意思を書面で表示することを条件にした現行法の根本を変えるものだ。国民を代表する国会議員による議論とはいえ、脳死を死と認めない人への配慮や、かつて不透明な移植が行われた反省もあって現行法ができた経緯を考えると、より幅広く国民の意見を聞くことが欠かせない。(1面参照)
こうした改正案が出された背景には現行法が97年に施行されて以来、脳死移植の実施例が28例と少ないことがある。理由として(1)現行法では本人の書面での意思表示の確認など条件が厳しい(2)意思表示カードへの表記が不十分な場合、本人に提供の意思があったとみられながらその意思がいかされない例がある――などが指摘されていた。
患者団体の中からは現行法では認められていない15歳未満の子どもへの提供に道を開く改正をきっかけに、条件が厳しい現行法の根本を変えてもらいたい、という思いがあった。
家族の同意だけで提供ができる要点は諸外国の法律と一致している。現行法の場合も94年に国会に提出された当初の法案の骨子は今回と同じだった。しかし、それが国会の審議の中で医療不信の問題や脳死を死と認めない意見との「妥協点」として現行法ができた。
子どもの脳死移植へ道を開くと同時に、脳死移植の普及をより図りたいというのが今回の改正案の狙いだ。ただ、臓器提供の意思表示カードなど、本人意思を尊重することは移植以外の医療でも定着しているだけに、「たたき台」として慎重な議論を求めたい。
(本多昭彦)

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