臓器移植法、新案作りへ 子ども解禁・書面不要、脳死判定は厳格化 与野党理事が合意

(2009年04月20日)

005062009年04月20日朝刊1総合00101281文字臓器移植法を今国会で改正することを目指し、衆議院厚生労働委員会の与野党の筆頭理事が、提出されている三つの改正案に加え、各案の要素を取り込んだ新案を作ることで合意した。現在は脳死からの臓器提供の意思を書面に記してある15歳以上の人が提供できるが、書面での意思確認をなくし、14歳以下でも家族が同意すれば提供できるようにする。脳死判定の厳格化や第三者によるチェックを法律に明記する方向で調整する。=26面に関係記事

3案は移植を受けた患者らの団体が支持するA案から、脳死移植に慎重なB、C案まで開きがある=表。外国への渡航移植を制限する世界保健機関(WHO)の決議を控え、新案は性急な移植拡大への慎重論に配慮しつつ国内の移植を広げる狙いがある。
本人の書面での意思表示は、脳死を一律に人の死とすることに社会的合意がないとして、慎重な意見を踏まえて盛り込まれた経緯がある。新案では、ドナーカードなどの書面ではっきりしていなくても、家族の同意で死体として臓器が摘出されることになる。「人の死」の範囲が広がるため議論を呼びそうだ。
鴨下一郎(自民)、藤村修(民主)の両筆頭理事はこれまでに、(1)14歳以下の臓器提供を解禁し、家族の同意で提供できるようにする(2)脳死判定の基準や第三者によるチェック体制を厳しくする(3)家族の同意などの条件を満たした場合に脳死を「人の死」とし、臓器を摘出できる、との基本的な考え方で一致した。
書面での意思表示なしで臓器提供できるようにする代わりに、脳血流が途絶えたことの確認を脳死判定に追加。病院の倫理委員会などを義務化し、子どもの場合に虐待を受けていなかったか、治療は尽くされたかなどを監視する。
大型連休明けまでに案をまとめ、賛同者を募って提出、衆院本会議で5月中の採決を目指す。個人の死生観にかかわるため自民、公明、民主各党は党議拘束をかけない見通し。どの案も過半数の支持を得る見通しは立っていない。
心臓はサイズが合わないと移植できず、移植が必要な子どもの患者の場合、子どもの提供者がいないと移植が受けられないという事情がある。だが、年齢制限をなくす考え方については、19日に奈良市で開かれた日本小児科学会の倫理委員会の会合で、子どもの脳死判定の難しさなどから慎重論が相次いだ。

■現行の臓器移植法と各改正案の違い
(1)脳死の位置付けと臓器提供条件 (2)子どもからの臓器提供
【現行法(97年成立)】
(1)本人に脳死からの臓器提供の意思がある場合のみ「人の死」。家族の拒否がなければ提供可
(2)15歳未満は不可
【A案(06年)】
(1)脳死は「人の死」。提供は本人に拒否の意思がなく、家族が同意した場合
(2)0歳から可能
【B案(06年)】
(1)現行法と同じ
(2)12歳以上に限定
【C案(07年)】
(1)現行法と同じ。脳死の定義(判定条件)を厳格化
(2)現行法と同じ(今後の検討事項)
【新案(検討中)】
(1)家族の提供への同意などの条件を満たせば「人の死」。脳死の定義(判定条件)を厳格化
(2)0歳から可能

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