(臓器移植インタビュー)年齢引き下げ、徐々に B案を提案・石井啓一氏

(2009年05月14日)

004722009年05月14日朝刊政治00400998文字石井啓一氏(公明)

――現行法をどう評価しますか。
「脳死からの臓器移植に道を開いた意味では評価されるべきだ。現行法は、生前に本人が文書で意思表示し、自己決定してある場合に、脳死を人の死と認めている。ある意味で知恵だ。脳死を一律に人の死とする考えに社会的な合意がない中、法律上、脳死を人の死と定義づけるのに躊躇(ちゅうちょ)があった。状況は今も変わっていない。自己決定がある場合に限り、脳死を人の死とする点は崩したくない。ただ、ドナーカードを持っている人も少なく、啓発活動もまだまだと感じている」
――B案を提案した理由は何でしょうか。
「中学生なら実質的に自己決定ができると考え、臓器提供の意思を表示できる年齢を12歳以上に引き下げる。学校教育での普及活動や、運転免許証の裏面、健康保険証などを活用して意思表示できるようにし、移植を進めたい」
――小児からの臓器提供についてどう考えますか。
「小児の脳死判定は非常に難しい。従来は、脳死の診断から数日で心臓死にいたると言われていたが、小児の場合は、数十日、数年生き延びる例もある。小児の脳死基準はじっくり検討すべきだ。また、虐待を受けた子を見分けるのも難しい。どうチェックするか。そうした基盤整備をせずに一気に年齢を下げては医療現場が混乱する。まず年齢を下げた後、徐々に広げていくのが現実的ではないか」
――今国会で改正案の採決を求める声が強まっている。どのような審議が必要でしょうか。
「いつまでにと期限を決めるのではなく、じっくりと各案の特徴や課題を国会議員、国民に理解してもらい、議論を深めるのが大事だ」
――新たにD案が提出される見込みですが、修正協議の余地はあるのでしょうか。
「臓器提供への自己決定を残せる案かどうかが、歩み寄れるかのポイントになる」
(北林晃治)

■現行の臓器移植法と各改正案
臓器提供の条件 子どもからの臓器提供
現行法 本人の書面による意思表示と家族の同意 15歳未満は不可
A案 本人に拒否の意思がなく、家族が同意 0歳から可能
B案 現行法と同じ 12歳以上に限定
C案 現行法と同じ 現行法と同じ(今後の検討事項)
D案 15歳以上は現行法と同じ。 0歳から可能
15歳未満は家族の同意と第三者機関の確認が必要

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