臓器移植法改正案を論点整理 連休明け、一括審議 衆院厚労委

(2009年04月29日)

004882009年04月29日朝刊政策総合00501194文字
臓器移植法改正をめぐり衆院厚生労働委員会の小委員会は28日、死の定義をはじめとする主要5項目に関する論点整理を終えた。厚労委は大型連休明けから、すでに提出されている3案と委員会の与野党理事らが作成を進めている新案の計4案を一括審議する予定。委員会で採決せず、本会議で各党が党議拘束をかけずに採決する見通しだ。
小委は07年6月に設置された。医療、法曹、宗教各界の有識者や世界保健機関(WHO)の移植医療の担当者ら延べ26人から5回にわたって参考人として意見を聞いたほか、臓器提供や移植を行う病院も視察した。三ツ林隆志小委員長(自民)が整理した論点は(1)日本の移植医療の現状(2)移植医療への評価(3)小児患者への移植(4)死の定義(5)親族への優先提供――の五つ。移植積極派から慎重派まで意見の開きが大きく、それぞれ両論を併記した=表。
ただ、「日本の臓器移植は欧米諸国と比較して非常に限られており、脳死を含め、死体ドナーからの臓器提供を増大させることが重要」「脳死判定された小児の臓器提供に関してプログラムを持つべきだ」とするWHO担当者の意見を最後に取り上げ、改正の必要性を印象づけた。
改正の焦点になっている15歳未満の子どもの臓器提供については、「現行法で認められていないため、海外に渡航して移植を受けている小児が多数いる。国際社会から厳しい批判を受けており、今後は海外での移植も困難になることが予想される」との指摘を紹介。そのうえで、家族の同意で認めるようにしたり、提供の意思表示が可能な年齢を12歳まで引き下げたりする考え方を列挙。一方で、子どもの脳死判定が難しいことや、虐待児からの臓器摘出の防止策を検討すべきだとの意見も盛り込んだ。(南彰、北林晃治)

■臓器移植小委員会がまとめた論点整理
【移植医療の現状】
<移植推進論> 欧米に比べ、移植の機会が少なく、多くの患者が移植を待ち望みながら亡くなっている
<移植慎重論> 脳死を人の死とする社会的合意が得られておらず、本人の生前の意思表示が必要

【移植医療の評価】
<移植推進論> 法施行以来、国内の脳死移植の成績は大変優れている
<移植慎重論> 助かるはずの命を救う救命医療を充実させるべきだ

【小児患者への移植】
<移植推進論> 家族の同意で臓器提供を認めるべきだ。親が意思表示することが自然
<移植慎重論> 親が代わって承諾することは親権者の権限を越えている

【脳死は人の死か】
<移植推進論> 脳死は人の死。社会的、倫理的問題や臓器提供の有無とは関係なく科学的に脳死診断するべきだ
<移植慎重論> 脳死を人の死と考える人は少ない。社会的合意ができたのか検証する必要がある

【親族への優先提供】
<移植推進論> 親族を救いたいという意思を尊重してもいい
<移植慎重論> 公平性を求める臓器移植法の基本理念に反する

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