参考:(歴史は生きている 識者20人に聞く:15)人間の欲望がむき出しの近代 朴裕河 (聞き手・桜井泉)【朝刊】

(2008年01月28日)

“なぜ歴史を学ぶのか。それは今を生きる者として「現在の構造」を知るためだ。東アジアの構造を理解するために大切なことを選んだ。戦争や植民地、冷戦にかかわる出来事が中心になった。
近代は帝国主義の時代であり、人間の欲望が最もむき出しになっている。その欲望を隠すために、差別と支配という暴力が目に見えない形で構造化した。交通手段の発達とともに、それまで会わなかった人たちの出会いが容易になった。政治や資本の力に追われて人は動き、出会い、葛藤(かっとう)が生まれた。”

“■私が選んだ10大出来事
(1)日清戦争と台湾の植民地化
(2)日露戦争と朝鮮の植民地化
(3)日本の中国への勢力拡張と日中戦争
(4)戦後日本の出発(戦争放棄と民主化)
(5)「戦後」の限界と日中韓の歴史をめぐる葛藤
(以下、順不同)
○閔妃と伊藤博文の暗殺
○南京虐殺
○アジア太平洋戦争と日本の敗北
○中華人民共和国成立と戦後の台湾
○朝鮮分断と戦争(済州島4・3事件も)”

“(2)の日露戦争は、朝鮮を支配下に置くための戦争であり、朝鮮を植民地にした。(1)(2)に伴い、人々の移住も始まる。開拓という名のもとに多くの人々が帝国の欲望を抱いて大陸に渡ったが、多くは日本に居場所を確保できなかった人たちで、実際は棄民だったという二重構造にも注目しておきたい。”

“ (4)は、民主化や戦争放棄といった戦後の理念が何とか今まで守られてきたことを、今の日本の若い人にもっと認識してもらうために挙げた。しかし(5)にも関係するが、戦後の理念を想起しつつも、戦争や植民地支配に対する責任意識が不十分だったことも、一緒に議論の対象にしてほしい。東京裁判で日本の植民地支配の責任が問われなかったことが影響している。”

“最後に「朝鮮の分断と戦争」。分断は、朝鮮内部の問題だけではなく日本の植民地支配の結果であり、米ソが朝鮮半島に介入した、米ソの代理戦争の側面がある。その後の冷戦構造に深く関係する出来事として理解して欲しい。”

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