【産経新聞】日本企業、「内部留保」460兆円のおかげでコロナ倒産せず。

(2020年05月18日)

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新型コロナウイルスの感染拡大は、
外国人の入国制限や緊急事態宣言に伴う外出自粛などで
日本企業にも大打撃を与えている。

ただ、
大企業の切迫感や危機感は、
海外企業と比べて
それほど大きくないようにみえる。

背景には、
国内企業が積み上げてきた
約460兆円もの「内部留保」
(利益剰余金=企業が稼いできた利益の総額)が
あるともいわれている。

かつては
「ため込み過ぎ」と批判された
日本企業の内部留保は
一転、コロナ禍をしのぐ“切り札”として
高く評価され始めたが、
果たしてそれでいいのか-。

政府が4月下旬に公表した
令和2年版の中小企業白書によると、

中小企業の
深刻な経営環境が浮き彫りになった。

収入がなくなった場合を念頭に、

現金や預金などの手元資産で、
従業員給与や家賃といった固定費を
どれだけ払えるかを試算したところ、

金融・保険業を除く全産業の経営体力は
1年10カ月弱だったものの、

飲食サービス業は5カ月強、
宿泊業は7カ月弱と短かった。

資本金1000万円未満の
規模の小さい企業だけでみると、

全産業の平均体力は1年未満、
宿泊業は3カ月以内に
経営が立ち行かなくなるという。

ところが、
大企業に目を転じると、
中小ほどの切迫感はみられないようだ。

日本銀行の
3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、

資金繰りが「楽」と回答した割合から
「苦しい」と回答した割合を
差し引いた指数は、

大企業18、
中小企業8と、
そろって前回調査(昨年12月)から
3ポイント悪化した。

ただ、大企業の指数は
中小の2倍強と、
資金繰りには
まだ余裕が感じられる。

政府・日銀の企業支援策も
中小・零細企業向けが中心だ。

「大企業は
こういうときのために
内部留保を積み上げていると思うので、
しっかりと活用してもらいたい」

西村康稔経済再生担当相は
3月の記者会見でこう語り、

多くの大企業は
自助努力で
コロナ禍を乗り切れる
との見方を示した。

内部留保は会計上、
「利益剰余金」と呼ばれる。

会社の設立から現在までの
毎年度の最終利益の累計額から
配当金などを差し引いた額だ。

会社が
自らの事業で稼いだお金であり、

返済が必要な
銀行借入金などとは異なる。

財務省の法人企業統計によると、
日本企業が内部留保を確保しようと
力を入れ始めた背景には、
平成20年のリーマン・ショック時に、
「銀行がなかなかお金を貸してくれない」
と資金繰りに四苦八苦した経験があるようだ。

東日本大震災直後の23年度に
約280兆円だった内部留保は
7年連続で過去最高を更新し、
24年度には300兆円、
28年度には400兆円を
それぞれ突破するなど右肩上がりだ。

日本を代表するグローバル企業の
トヨタ自動車の令和元年12月末時点の
利益剰余金は約23兆円に達し、
現預金は5兆円を超えている。

安倍晋三政権の経済政策
「アベノミクス」の“第一の矢”として放たれた
日銀の大規模金融緩和で、
円安・株高となり、
輸出企業を中心に
日本企業の利益が大きくアップしたことも、
内部留保がたまりやすくなった要因とみられる。

こうした巨額の内部留保にもかかわらず、
ここ数年、
賃上げや設備投資は伸び悩んでいた。

このため、麻生太郎財務相は

「(内部留保が)
会社員の給与や設備投資に使われれば、
景気回復を
もっと広く浸透させることができた」

と毎年のように
企業に苦言を呈してきた。

一時は、
財務省を中心に
ため込み過ぎた内部留保に
課税する案まで検討されていたようだ。

だが、
内部留保をめぐるこうした批判は
コロナ禍で消し飛んだ。

世界中で
企業の資金繰りが苦しくなる中、
日本企業の潤沢な内部留保が

海外からも
うらやましがられるようになったのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e36136b861c35bf45a99ec0ac8482bc43f97aa9c

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