【メルボルン大学】「肺感染症から回復した人は、肺炎の発症リスクが増大する。」
(2020年05月29日)重度の肺感染症から回復した患者では、
体の免疫反応を阻害する「免疫の傷跡」が形成され、
これが原因で
肺炎の発症リスクが増大する
との研究結果が
このほど、発表された。
肺炎は、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の
主な死因だ。
研究では、
一部の重度感染症に罹患(りかん)した後、
体の免疫反応が
一時的に「スイッチが切られた」状態となり、
患者が
新たな細菌性疾患や
ウイルス性疾患に
かかりやすくなることが分かったという。
研究を行ったのは、
豪メルボルン大学(University of Melbourne)
ピーター・ドハーティ感染免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity)と
仏ナント大学病院(University Hospital of Nantes)の専門家チーム。
人間とマウスを対象に調べ、
免疫系の防御の第一線を形成する細胞「マクロファージ」が、
重度の感染症に罹患した後に
「まひ状態」になることを明らかにした。
マクロファージは
細菌を貪食(どんしょく)して殺菌するとともに、
体内で「警報」を発して
免疫細胞を感染部位に急行させる。
脅威が処理された時点で
マクロファージは活動をやめ、
体は平常の状態に戻る。
しかし研究チームは今回、
重度の感染症に罹患した患者の
血液サンプルを分析した結果、
患者のマクロファージ
が不活性化されていることを発見した。
これにより、入院中の患者は、
肺炎など命にかかわる恐れがある
二次感染リスクの高い状態に陥ってしまう。
欧州では
年間約50万人の入院患者が
肺炎に感染しており、
そのうち約10%が
命を落としている。
研究チームはまた、
受容体「SIRP-アルファ」が、
マクロファージの再活性化を誘発するための
「スイッチ」となることも発見している。
このスイッチにより、
マクロファージを
「フル稼働」させることが可能だという。
今回の研究は、
COVID-19の治療法を考える上で
今後、重要な影響を与える可能性がある。
COVID-19による死亡の大半は、
体の免疫反応が暴走する
サイトカインストームが原因で起きている。
サイトカインストームは、
致命的となるケースが多い
急性炎症が引き起こす。
ナント大学病院の
アントワーヌ・ロキリー(Antoine Roquilly)氏は、
SIRP-アルファや体の免疫反応を
一時的に停止させる
その他の免疫スイッチに関する理解の向上が
「サイトカインストームの発生を防ぎ、
患者の生存率を改善する可能性がある」
と指摘している。
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