「書面必要なら提供困難」 臓器移植フォーラムで指摘 東京

(1998年02月25日)

016841998年02月25日夕刊科学01200696 臓器移植法の成立後も脳死からの移植が一例もないため、移植を推進する方法を探ろうと、日本移植学会(野本亀久雄理事長)は先週、米国やドイツから専門医師七人を招いて、東京で「臓器移植フォーラム」を開いた。医師や報道関係者ら約百人が参加した。七人は「待っている患者のために、移植はどうしても必要だ」と訴えた。
ドイツ・ボッフム大の南和友教授(心臓血管胸部外科)は、「ドイツは家族の了承で臓器提供でき、年間四百から四百五十の心臓移植がある。しかし、脳死状態で臓器移植の可能性がある人のうち、臓器移植の意思を表すカードを持っているのは二%だけ」と説明、本人の書面による臓器提供の意思表示が必要な日本では移植は難しいと指摘した。
全米臓器分配ネットワークの会長も務めた米・南カリフォルニア大のロバート・メンデス教授(外科、泌尿器科)は、「日本は臓器移植の啓もうが足りないのではないか。米国内ではアジア系の人の臓器提供が増えている」と述べた。
会場からは「移植が進まない背景に医療不信がある」と発言があり、参加した医師から「不信とは何か、はっきりしていない」「世界と比べても医師と患者の信頼関係はそれほど変わらない」と反論が出た。米国の医師は「最も公平であるべき医療であり、移植に医療不信があるとは信じられない」と驚いた様子だった。
しかし、「医学会全体としてルール違反にどう対処するか打ち出せず、医者の中のもたれあいもあった」と、日本最初の心臓移植で死の判定に疑問を残すなど、過去の移植事件をめぐる対応が不十分だったという意見もあった。「厳しい法律だが、その中でわずかでも症例を重ねたい」との発言も出た。

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