「脳死とは」再び 臓器移植法改正案
(2009年04月25日)004952009年04月25日朝刊3総合00303305脳死と判定された人からの臓器提供を可能とする法律が、97年の施行から12年を経て、改正議論のまっただ中にある。複数提出されている改正案を再編し、新たな案を提出する議員の動きも活発だ。そもそも脳死とは何か。臓器移植法はなぜ今の形になったのか。
(小堀龍之、南彰、服部尚)
●提供の場合のみ「人の死」と認定
死ぬといえば多くの人が思い浮かべるのは、肌がくすんで、体が冷たくなった姿だろう。一般的に「人の死」は、(1)呼吸が止まる(2)心臓が止まる(3)瞳孔が開いて反応がない――の三つが根拠になってきた。「息をひきとる」は(1)で「脈がない」は(2)。臓器移植法ができるまでは、この「死の3兆候」を医師が確認して死亡診断書を書くしか、「死」はなかった。
だが、全脳の機能を失った状態である脳死はまったく違う。体は温かく、眠っているようにみえる。神経反射で体を動かすことさえある。
脳には呼吸や血液を全身に循環させる脳幹という部分がある。交通事故などで頭に大けがをしたり、心臓発作などで脳に酸素が届かなくなったりして、脳幹が損なわれれば、呼吸が止まって、すぐに死んでしまう。
だが脳全体の機能が損なわれても、機器を使えば、ある程度の期間、呼吸や血液の循環を保つことができる。こうした生命維持装置の発達で、20世紀に「脳死」は現れた。
ただ限界はあり、脳死状態から心停止までは、通常、数日から1週間程度という。
血が流れているので臓器も新鮮に保たれ、移植が可能になる。欧米では1960年代、脳死状態の人からの移植が始められた。
よく誤解されるのは「植物状態」との違いだ。植物状態では、思考などに必要な大脳の機能は損なわれても脳幹の機能は残り、自発呼吸がある。脳幹が働いているのが、脳死との大きな違いだ。
日本では68年、札幌医大の和田寿郎教授(当時)が国内で初めて心臓移植をした。ところが、提供者の脳死判定をめぐって捜査当局が動くなど疑惑が生じたのを受け、脳死移植議論が滞った。
その後、政府は、89年に設置法をつくり、脳死は人の死か、どう受け止めるべきかを政府が正面から議論した。「脳死臨調」は92年にまとめた報告書で、「脳死は人の死」とした。一方で、その考えに批判的な意見も少数派意見として盛り込んだ。
94年に議員立法で提出された法案は、脳死を人の死とした。だが、このままでは成立が難しいとして、本人意思が書面で表示された場合に限る修正案が出された。
97年に成立、施行された臓器移植法では、本人が生前に書面で提供の意思を示し、脳死判定された場合のみ脳死を人の死とする、「条件付きで脳死は人の死」とした。このため、提供を前提とした脳死判定以外では、脳死の位置づけはあいまいなままだ。
●意思表示を重視 年齢制限設ける
臓器移植法に基づく脳死提供は、10年余で計81例にとどまる。一方、厚労省研究班調査では、海外に渡って心臓、肝臓、腎臓の移植を受けた人は計522人。心臓移植の103人のうち10歳未満の子は、33人と3割に上る。
幼い子が、日本で心臓移植を受けられる機会はほぼない。15歳未満は提供できない現行法では、病気の子の心臓と提供者の心臓のサイズがあわないためだ。
では、現行法がなぜ15歳未満の子からの提供を認めなかったのか。「本人が生前に書面で意思を表明する」ことを前提としたためだ。
何歳に達すれば「自分の臓器を死後に提供したい」という意思を表明する能力があるのかについては、民法で有効と定める遺言の年齢を参考に15歳以上とした。
改正の動きの原動力は、幼い子が国内移植を受けられない状況を見過ごせない、という事実がある。だが幼い子からの提供が可能と改正されても、判定には課題がある。
6歳未満の脳死判定基準については、85年に旧厚生省研究班(主任研究者=竹内一夫・杏林大名誉教授)が作った基準をもとに99年度、別の研究班が作成した。
その結果、検査項目は大人と同じでも十分だとしたが、「子どもの脳は回復力が強い」として、生後12週未満は判定から除外し、大人なら6時間とする2回の検査の間の観察時間を6歳未満は24時間以上にした。
判定の検査項目の中には、人工呼吸器を止めて自発呼吸が本当にないのか確かめる「無呼吸テスト」がある。
だがこのテストに医師らの抵抗感が強い。脳死状態とされた子が、心停止するまで数カ月かかる症例も報告されている。熊本大の木下順弘教授(救急)は「無呼吸テストをきちんとしなければ正しく脳死判定できない」と指摘する。
年齢制限がなくなっても、提供が増えるかは不明だ。今でも心臓が停止した後の腎臓提供には年齢制限はなく、家族の同意だけで可能。だが95~08年で、0~5歳の提供は、10例にとどまっている。
●迫るWHO規制 見直し議論加速
今月に入って衆議院厚生労働委員会の理事らが、提案済みの三つの改正案を再編して新案をつくっている。今国会で法改正をするため、大型連休明けの法案提出を目指す。
世界保健機関(WHO)が5月にも、渡航移植を規制する方針を総会で決議する見込みのためだ。
臓器提供増を目指した改正は、法成立時からの課題だ。法は付則で「施行3年後」の見直しを規定する。だが、いまのA、B案が提出されたのは06年。その前年にも案は提出されたが、議論は活発とはいえなかった。
停滞していたのはなぜか。「脳死を一律に人の死とする」A案と、現行法と同じく「提供時のみ、脳死を人の死とする」B、C案との隔たりが大きいためだ。
A案は、臓器提供時に限らず脳死を死とし、本人の書面による意思表示という条件をなくす。家族の同意があれば年齢に限らず、臓器提供ができるようにする。移植推進派がつくった。
3兆候による、現在の「死」の定義の変更を意味し、成立すれば、様々な法律や仕組み、治療のあり方など、社会に大きな影響を与える。一方で、提供数が増えるという期待がある。
B、C案は本人の意思表示が必要という点で現行法と同じ。B案は、提供の意思表示は12歳以上で可能とした。また、C案は脳死判定をより厳格にすることを求めている。判定に疑問を抱く議員らが提案した。
新案は、より多くの議員が賛同できることを目指す。
死の定義や15歳以上の臓器提供の条件については、現行法通りとする方向。本人の意思表示なしで15歳未満の臓器提供を可能にするが、親族の同意だけでなく、病院内の倫理委員会など第三者機関のチェックを条件にする。虐待などの有無を点検するためだ。
新案作りの中心メンバーは当初、15歳以上も脳死判定基準の厳格化を盛り込むと同時に書面確認をなくす考えだった。だが、本人意思の確認を求める声が強いことなどを受け、方針を修正した。
急に議論が進む国会状況に、90年代に脳死臨調の委員だった光石忠敬弁護士は懸念を示す。「脳死とどう向き合うかは人間の根幹にかかわる問題。急いで答えを出すべきではない。これまでほとんど議論してこなかった国会が、衆院解散の迫る今、短期間で結論を出そうとするのは、間違っている」と話す。
■臓器移植をめぐる主な出来事
1967年 南アフリカで世界初の心臓移植
68年 札幌医大で日本初の心臓移植
85年 旧厚生省研究班が脳死判定基準を公表
92年 政府の脳死臨調が多数意見で脳死・臓器移植を承認する答申を首相に提出
94年 「脳死を人の死」とする臓器移植法案が議員立法で国会に提出
96年 本人意思が書面で残された場合に限り、臓器提供を認めるとする修正法案を提出。衆院解散で同案は廃案になったが、ほぼ同じ内容の法案が提出される
97年 臓器提供の場合に限って「脳死を人の死」とする臓器移植法が成立
99年 高知県で、法に基づく初めての脳死判定と移植
2006年 法改正を目指し、A案とB案が提出
07年 C案提出
●臓器移植法にもとづく脳死と植物状態
<機能喪失部分>
脳死 大脳、小脳、脳幹を含む全脳の機能が喪失
植物状態 脳幹の機能が残った場合
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