脳死臓器提供、虐待受けた子は除外 小児科学会提言

(2005年02月02日)

008232005年02月02日夕刊2社会01400675文字脳死になった小児からの臓器提供を認める場合の条件を検討している日本小児科学会(衛藤義勝会長)は、虐待を見抜ける医療スタッフの育成や、病院から独立した公的な虐待監視チームの必要性を訴える提言を公表した。同学会は被虐待児を提供者にさせない原則を確認している。
学会が、小児の救急患者を診療する学会認定病院や救命救急センターにアンケートしたところ、虐待をした親の8~9割が隠そうとうそをついていた。脳死状態だったり重症だったりした129件のうち、虐待と確定するのに60日以上かかったケースが9件あった。
これを受けて提言は、医療現場で虐待を見抜く難しさを指摘し、「現時点では、小児脳死症例から被虐待児の排除が可能な病院は少ない」と結論づけた。仮に、脳死の小児からの臓器提供が可能になったとしても、提供は虐待対策の行き届いた病院から限定的に始めるよう求めている。
一方、学会は、何歳なら提供の意思が自分で決められるかについて、現行法を前提に「12歳程度(中学生程度)ならば意思表示は可能」とする案を理事会で了承している。しかし、推進を望む関係者の反発や、法改正論議への影響を配慮し、公表を保留。小児の脳死判定基準の検証については「症例の蓄積がない」として結論を先送りし、脳死の小児からの臓器提供をめぐる議論の難しさを改めて浮き彫りにした。
現行の臓器移植法では15歳未満の子どもからの臓器提供が事実上、できないため、小児患者を中心に海外で移植を受けようと渡航するケースが後を絶たない。こうした状況を受け、学会は03年に委員会を作り、議論してきた。(権敬淑)

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