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006002007年10月17日朝刊政策総合00902590文字施行から10年を迎えた臓器移植法の改正議論では、本人の意思確認が焦点となっている。朝日新聞の世論調査では、本人の提供意思の確認が「必要」と答えた人が、家族の同意だけでよいとする人を上回った。移植を待つ患者らが求める改正案は、家族承諾のみで移植を可能にする内容だが、世論はより慎重な意思確認を求めているようだ。

国会に議員提案された改正2案は、脳死を一律に人の死とし、年齢に関係なく臓器提供を認めるA案と、現行法の枠組みを維持し、意思表示を認める年齢を現行の15歳から12歳に引き下げるB案。両案とも提案理由の説明後、審議が進んでいないが、多くの患者団体は、A案の実現を訴える。
だがA案は、意思表示を必ず書面で行う現行と異なり、本人が明確に拒否していない限り家族承諾で提供が可能だ。
調査では、本人意思の確認を必要とする人が48％と、家族の承諾だけでよいとする人を上回り、20、30、50代でその傾向が強かった。A案に課題を突きつけた格好だ。
NPO法人日本移植者協議会（大阪市）の大久保通方・理事長は「A案は本人が意思を書面に残していなくても、その意思を知っている家族が代わりに承諾する仕組みだ。逆に、40％の人が家族の承諾だけでよいと答えたことの方が心強い」と解釈する。
現行法のもう一つの課題が、15歳未満の子どもからの臓器提供が認められていない点。乳幼児は、大人からの提供ではサイズが合わず、特に心停止後の移植が不可能な心臓は、渡航移植しか道が残されていない。

○子供の提供、容認は46％
調査では、15歳未満の子からの臓器提供を認めるべきだと答えた人（46％）のうち、A案と同じく年齢制限をなくすべきだとした人が6割超。一方、B案と同様に、初等教育が終わる12歳まで引き下げるべきだとする人は2割にとどまった。
A案を支持する全国心臓病の子どもを守る会（東京都豊島区）の斎藤幸枝会長は「12歳に引き下げても乳幼児は救われないということが理解されているのではないか」と話す。
また、「脳死」を認める人はほぼ半数。調査方法は違うものの、92年から99年までに実施した計5回の調査と大きな変化はなかった。
生命倫理政策研究会・共同代表のぬで島（ぬでしま）次郎さんは、家族の提供賛成が増えていることも踏まえ、「脳死を死とするのは移植のときだけという現行法が日本人の多数の意識に即していることが確認された。本人意思を必須とする人のほうが多いのも同じだ」と話した。

◇「改正へ審議を」患者団体訴え
患者団体らでつくる臓器移植患者団体連絡会は16日、東京・霞が関で会見し、現行法を改正して、家族の承諾のみでも提供が可能になるようにすべきだと訴えた。改正案は国会に提出されているものの、実質的には審議されていない。
法施行後も脳死移植が伸び悩む中で、腎臓、肝臓の生体間移植がさらに伸びている。代表幹事の大久保通方さんは「国会はこの10年何をしてきたのか。一刻も早く、改正に向けて審議を始めて欲しい」と話した。

■現行の臓器移植法と改正2案の概要
【現行法】
・臓器移植する場合に限り、脳死を人の死とする
・書面による本人の意思確認と家族の承諾が必要
・臓器提供者は15歳以上
【A案】
・脳死は一律に人の死とする
・本人の拒否がなければ家族の承諾で臓器提供を認める
・15歳未満の臓器提供を認める
【B案】
・現行法と同じ枠組み。提供意思を表明できる年齢を「12歳以上」に引き下げ、提供者になれるようにする

■15歳未満からの臓器提供
認めるべきだ 46％
認めるべきではない 35
その他・答えない 19

「認めるべきだ」のうち
12歳まで 22％
年齢制限をなくし乳幼児にも認める 66
その他・答えない 12

■質問と回答
（数字は％。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。◆は全員への質問。◇は枝分かれ質問で該当する回答者の中での比率。〈 〉内の数字は全体に対する比率）

◆脳死とは、いわゆる植物状態とは違い、人工呼吸器で心臓が動いていても、脳の働きがすべて止まって、回復しない状態をいいます。あなたは脳死を人の死と認めますか。人の死は心臓が停止した場合に限るべきだと思いますか。
脳死を認める 47
心臓停止に限るべきだ 34

◆臓器移植法では、脳死になった人が意思表示カードかシールで臓器提供の意思を明らかにしていても、家族が認めなければ臓器提供はできません。もし家族のだれかがこのカードかシールを持っていて脳死になった場合、提供に賛成しますか。反対しますか。
賛成する 71
反対する 17

◆臓器移植がしやすいように、法律を変えようという動きがあります。その一つは、本人の意思が確認できなくても、家族の承諾があれば、臓器提供できるようにする意見です。本人の意思の確認が必要だと思いますか。家族の承諾だけでよいと思いますか。
本人意思の確認必要 48
家族承諾だけでよい 40

◆いまの法律では、15歳未満からの臓器提供が認められていません。法律を改正し、15歳未満からの臓器提供を認めるべきだと思いますか。
認めるべきだ 46
認めるべきではない 35

◇（「認めるべきだ」と答えた46％の人に）15歳未満からの臓器提供を認める場合、提供できる年齢の制限を15歳から12歳まで引き下げる意見と、年齢制限をなくし乳幼児にも認めるという意見があります。12歳まで引き下げるのがよいと思いますか。年齢制限をなくし乳幼児にも認めるのがよいと思いますか。
12歳まで引き下げる 22〈10〉
年齢制限をなくし乳幼児にも認める 66〈31〉

◇（同）15歳未満の臓器提供について、家族の承諾だけでなく本人の意思の確認が必要だと思いますか。それとも、家族の承諾だけでよいと思いますか。
本人意思の確認必要 35〈16〉
家族承諾だけでよい 54〈25〉

＜調査方法＞ 13、14の両日、全国の有権者を対象にコンピューターで無作為に電話番号を作る「朝日RDD」方式で調査した。対象者の選び方は無作為3段抽出法。有効回答は2113人、回答率は58％。この調査は、16日付朝刊既報の内閣・政党支持などの調査と同時に実施した。