シェリー・レヴィン「ウォーカー・エヴァンズにちなんで(ウォーカー・エヴァンズによるアリー・メイ・バローズの肖像にちなんで)

(1981年)

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シェリー・レヴィンは1930年代にウォーカー・エヴァンズが撮影した写真から22点選んで使ったにもかかわらず、彼女はこれを「ウォーカー作」ではなく「レヴィン作」と銘打った。自分の行為であり、自分の思考の展示だと言う訳である。「私は写真を写真に撮るのです。自然と文化が人間に秩序感と意味をもたらしてくれること。それを欲する気持ちが表現されている写真を選びます。それらのイメージを借用して、身を挺することにまつわる受難と、孤高であることの荘厳さ、その両方に同時に憧れる自分の気持ちを表現します」本人も語っているように奇妙さ、そう、「オストラネニエ(奇異なモノニする)」(理論家のヴィクトール・シュロフスキーが提唱した手法。1914年彼はこう述べている。「芸術は生活感覚を回復するため、石をより石らしくする一助として存在する。芸術の目的はものごとを奇異なものにすることだ」「新しい芸術形式を創出してはじめて、世界感覚を人は取り戻すことができる」)を感じさせるこれらの作品は、皮肉にも、もとの作品よりも強いオーラを発している。ところが発表当時は、アートの空疎なシミュラークル(模倣、類似)と受け止められることがほとんどだった。だが、彼女より10年前のアーティストと比較したら、記号論や写真史についてずっと深い認識をもった彼女だったからこそ、この作品は日の目を見た。このことを見過ごしてはならない。最近のおおかたの写真と同様、これは言われるよりもっと「知識基盤のしっかりした」作品であり、そして、アート史における戦略的行動として意識的に敢行された行為だったのだ。

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