ジョセフ・コスース「禁句遊戯」

(1990年)

blogger-image-1960737321.jpg

ブルックリン美術館の大ロビーでの作品制作を依頼されたジョゼフ・コスースは、美術館が所有する100点ものオブジェをひとまとめにして、(禁句遊戯)と名づけた。「禁句」とは性的、政治的を問わず、検閲の対象となりかねないあらゆるものを指していた。ちなみにかつては、女性の下着がそう呼ばれていた。つまりそれは口に出しては行けないものだったのだ。これが実行されたのは、「わいせつ」とされたロバート・メイプルソープの写真7点を展示した美術館のキュレターの裁判がシンシナティで開かれる寸前のことだった。検閲の強化と、その種の「汚れたもの」に資金を出していた全米芸術基金(NEA)の予算削減を要求していたジェシー・ヘルムズ上院議員は、芸術の腐敗は社会の腐敗だと主張した。ブルックリン美術館という厳粛な機関でコスースが見つけ出した画像のなかには、ヘルムズを驚愕させるようなものも混じっていた。男が男の口の中へ放尿している絵ーペルシアのミニアチュール画だ。ヘルムズがなかでもあくなく憎悪の的にしていたメイプルソープの写真にも、同じような光景が写っていた!コスースは、キュレターではなくクリエーターとして、この展示を仕組んだという。その理由を尋ねられ、彼はこう答えた。
「アートを高価な装飾品以上のものにしようと思うなら、今までになかった哲学的、政治的意味を表現することこそアートだ。という見地に立たなければならない。それは、どういう経験の方法を取り入れるか、つまり、文脈の問題によって左右される。まさにこの展示は、そういう意味合いをこめて、美術作品が言葉であることを表明する試みだ。個々の単語はそれぞれで完結しているのが、組み合わせ次第でまったく別の段落を作ることもできる。その段落の作者として、私は自分の立場を表明している」