【東京新聞】クールジャパン機構、株主企業に出資 6社196億円還流。

(2020年01月06日)

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政府と民間が資金を出して運営する官民ファンド
「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が
出資した事業のうち、
少なくとも七件が
機構の株主企業六社に関連していたことが
本紙の取材で分かった。

公的資金が
株主企業に還流された形で、
機構の中立性が揺らぐ可能性がある。

機構の投資先を決める内部組織に
投資先企業の役員がいたことも判明。

識者は、
公的投資の名目で
私企業の利益を図る
「利益相反」の疑いを指摘する。 (大野暢子)

本紙は、
機構が二〇一四~一九年に公表した
出資三十二件の内容を事業報告などから調べ、
株主六社に関係する出資を計七件確認した。

総額は百九十六億円。

出資全体の三割にあたる。

株主の出資額の二十倍超を支援した例もある。

機構は一四年九月、
中国・寧波への商業施設出店事業に
百十億円の出資を決めた。

この事業は、
機構に五億円を出資する株主の
「エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング」(大阪市)が
中心を担っている。

利益相反が疑われる出資は、
マレーシアにある日系百貨店の改装事業への十億円。

機構株主の
三越伊勢丹ホールディングス(HD)の
子会社が事業を請け負った。

機構が出資を決めた一四年九月当時、
投資先を選ぶ内部組織
「海外需要開拓委員会」の委員長を
HDの社外取締役が務めていた。

政府は
官民ファンドに中立的な投資を求めている。

海外需要開拓支援機構法は
同委員会の運営に関し

「特別の利害関係を有する委員は
議決に加わることができない」

と定めている。

経済産業省クールジャパン政策課の三牧純一郎課長は、
株主が関わる事業への出資七件を認めた上で、
決定に際しては政策的意義や収益性といった
政府の支援基準を守っていると本紙に説明。

「機構株主と出資先の企業が同じだからといって、
ただちに問題があるとの認識はない」

と語った。

利益相反の指摘に対しては

「出資者を含む利害関係者は
支援決定の議論や議決から
外れることになっている。

マレーシアの案件も
当該取締役は
議論・議決の場にいなかった」

と述べた。

官民ファンド問題を追及している立憲民主党の蓮舫参院議員は

「五億円の出資で
百十億円の支援を受けるのは
公金の還流だ」

と投資の中立性に疑問を呈した。

慶応大大学院の小幡績(おばたせき)准教授(企業金融)は

「官民一体という構造上、
政府が機構の株主に
一定の配慮をしなければならず、
結果的に利益相反が生まれる。

公金が使われる以上、
国民に疑問を持たれる余地があってはならない」

と語った。

クールジャパン機構は
日本文化の発信で成長が見込める企業に投資。

昨年九月現在、
政府が七百五十六億円、
民間二十三社が
計百七億円を出資している。

<官民ファンド>

リスクが高く、
民間だけでは資金を調達できないが、
成長が見込めそうな企業の株を買う機関。

株の売却益や配当が出れば出資者に配るが、
事業の失敗で資金を回収できないこともある。

2012年発足の第2次安倍政権が成長戦略に掲げ、
全14のうち10ファンドを新設。

クールジャパン機構は13年11月に発足。

業績不振が指摘され、
18年度末の累積損失は179億円。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202001/CK2020010602000129.html

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