【アメリカ】Moderna社が、ワクチンの治験薬を初出荷。
(2020年02月24日)米国で、
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する
ワクチンの臨床試験が
そう遠くない時期にスタートしそうだ。
米Moderna社は、
2020年2月24日、
新型コロナウイルスを対象に、
同社が開発中の新規ワクチン(開発番号:mRNA-1273)の治験薬の
最初のロットを出荷した
と明らかにした。
第1相が実施されれば、
新型コロナウイルスの臨床試験としては
世界初になるとみられる。
Moderna社は、
2010年に創業され、
メッセンジャーRNA(mRNA)をベースとした
治療薬やワクチンを開発している
上場ベンチャー企業だ。
新型コロナウイルスを対象に開発中のmRNA-1273は、
ウイルス表面に発現しており、
ヒトの細胞への感染時に足がかりとなる、
スパイク(S)蛋白質遺伝子をコードしたmRNA(mRNA医薬)。
mRNA-1273を接種すると、
体内でmRNAからスパイク状蛋白質が発現。
被接種者の免疫が、
スパイク蛋白質を抗原として認識し、
スパイク蛋白質に対する液性免疫や
細胞性免疫が誘導されることで、
新型コロナウイルスに感染しにくくなったり、
重症化が抑えられたりする効果が期待される。
これまでの研究から、
新型コロナウイルスは、
ウイルス表面のスパイク蛋白質が、
ヒト細胞上のアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)受容体に結合し、
エンドソームに輸送された後、
膜融合を起こしてヒトの細胞質内へ侵入、
感染すると考えられている。
スパイク蛋白質は、
膜融合前は安定化しているものの、
膜融合時に構造が大きく変化することも
明らかになっている。
今回Moderna社は、
米国立衛生研究所(NIH)傘下の
米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と協力して
ワクチンを設計した。
mRNA-1273は、
膜融合前の安定化した形態のスパイク蛋白質を
発現するように設計されているという。
中国の研究チームが1月中旬、
新型コロナウイルスのゲノム情報を解読・公表してから、
ワクチンを設計し、
Moderna社が臨床試験向けの治験薬を
製造するまでかかった期間は
約40日程度――。
不活化ウイルスワクチンや組換え蛋白質ワクチンは、
製造用のウイルス株や
組換え細胞を樹立するのに時間が掛かる上、
安定的に製造できる工程を確立するのに
さらに時間を要する。
それに対してmRNA-1273は、
mRNAベースのワクチンのため、
公表されたゲノム情報をベースに設計できることや、
人工的に合成できることから、
短期間で治験薬の製造に至った。
Moderna社が、
マサチューセッツ州Norwoodに製造施設を持ち、
これまで臨床試験向けに
複数品目の治験薬を製造していた実績があったことも大きいだろう。
mRNA-1273は今後、
NIAIDで非臨床試験が行われ、
安全性などが確認されれば、
NIAIDで第1相臨床試験がスタートする見通しで、
実施されれば
新型コロナウイルスに対するワクチンの臨床試験としては、
世界初になるとみられる。
今回の治験薬の製造は、
日本など複数の国、
米Bill & Melinda Gates財団、
英The Wellcome Trustなどが拠出する
官民連携パートナーシップである、
感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)が支援した。
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