【ロスアラモス国立研究所】欧州株の感染力は、武漢株よりも協力。(突起に14の変異)

(2020年04月29日)

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■「欧州株の分布は驚くべき速さで増す」

新型コロナウイルスの変異について
米ロスアラモス国立研究所は4月29日、

スパイクタンパク質における
14の変異を特定し、

その中の1つの変異株
(D614G、いわゆる欧州株)が

2月初めから欧州で感染拡大し、
世界中に広がった

と指摘する
査読前論文を発表しました。

論文は

「D614Gの分布は
驚くべき速さで増しており、

もとの武漢株と比較して
より迅速に拡散できる
適応度の優位性を示している」

と分析しています。

筆頭著者の
ベティ・コーバー氏は
フェイスブックにこう書いています。

「新興ウイルスが
非常に早く広がり、

3月には
パンデミックの
支配的な株になったことを見ると心配だ。

この変異株が流行し始めると、
それまでに
その地域で広がっていた株に
取って代わる。

D614Gの感染力は強い」

コロナウイルスは
表面に他のウイルスとは異なる
「王冠(コロナ)」のような
突起(スパイク)を持っています。

この突起は
スパイクタンパク質から成り、

標的となる細胞表面の
受容体(レセプター)結合と
細胞侵入の
中心的な役割を果たしています。

新型コロナウイルスの
スパイクタンパク質は

ヒトの上気道や肺、腸などの
上皮細胞表面にある
酵素ACE2にひっつきます。

今回の研究論文は
そのスパイクタンパク質の変異を
ゲノム情報から解析したものです。

ロスアラモス国立研究所は
世界中の患者6346人から採取された
新型コロナウイルスのゲノム情報を解析。

その結果、
スパイクタンパク質の14の変異を特定し、

欧州で被害を広げたD614Gが
他の地域でも
最も優位的な変異株になっていることが分かりました。

新型コロナウイルスの変異株が
非常に急速に出現して、
感染力が強いため
優位的に広がったことを示唆しています。

査読前論文なので

スパイクタンパク質の変異が
感染力や病原性の違いに
どのような影響を与えるのか、

もう少し待たないと
確かなことは言えません。

スパイクタンパク質は
ワクチンの重要なターゲットであるため、
早い変異は
ワクチン開発にも
大きな影響を与えます。

欧州株に感染した患者は
ウイルス量が多いようですが、

入院率で見た場合、
武漢株と欧州株には
大きな差がなかったようです。

しかし
武漢株に感染して
抗体ができたとしても
欧州株に感染するかもしれません。

流行の主流となった武漢株(オレンジ色)と
欧州株(青色)の流行を
観察したのが下のグラフです。

※グラフはソースで

日本はもう少しで
欧州株の流行を
シャットアウトすることができそうです。

安倍晋三首相が
国家緊急事態宣言を
今月末まで延長したことに対する批判が
日本では渦巻いていますが、
筆者は勇断だと思います。

欧州株は
武漢株より感染力が強いので
一段の警戒が必要だからです。

もたもたしているように見えるのは
日本が自由民主主義国家である証明です。

これまでに発表されている
主な研究論文を
おさらいしておきましょう。

■2月21日「新型コロナウイルスに5つのグループ」

※略

■3月3日「新型コロナウイルスにL型とS型」

※略

当初、論文の中で、
L型が普及していることから
「L型の方が、感染力が強い可能性がある」
と指摘していましたが、

誤解を招くという批判を受け
「(S型より出現の)頻度が高い」
と修正しました。

■4月8日「新型コロナウイルスにA、B、Cの3タイプ。誕生は昨年9月13日~12月7日」

※略

■4月14日「アイスランドで流行する7つのハプロタイプ」

※略

■4月14日「感染力も毒性も突然変異する新型コロナ『強毒種は270倍のウイルス量』中国の研究」

※略

■4月27日「新型コロナは14日ごとに変異 感染研が分析 武漢株より怖い欧州株を食い止められるか」

※略

中国経由の第一波を封じ込めたものの3月中旬以降、
欧米経由の第二波(欧州株)の輸入症例が
国内で広がっている恐れが強いと指摘しました。

■4月28日「新型コロナは10タイプに変異 うち欧州株が支配的に」

インドの国立生物医学ゲノミクス研究所の研究班が
55カ国3636個のゲノム情報を解析した結果
「祖先の“Oタイプ”から10タイプに変異。

うちA2a(いわゆる欧州株)が
全ての地域で支配株に」と指摘する論文を
インド医学研究評議会(ICMR)の医学雑誌に発表する
と地元紙が報道。

A2aが世界中で支配的になったのは
肺の細胞に侵入しやすいからと分析しています。

※略

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200506-00177298/

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