【テキサス大学】ラップ教授が、ラマから抗体薬を作成したと発表。

(2020年05月05日)

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新型コロナウイルス用の
新しい抗体薬が
ラマ(リャマ)から作られました。

この抗体は
2つの異なる部品を
合成して作られた合成抗体であり、

ウイルスの外周に存在する
突起部分(スパイク)に結合することで、

ウイルスが細胞に付着するのを妨げ、
感染力を奪います。

実験では、
この抗体が
ヒトの培養細胞に注がれたウイルスの感染を、
完全にブロックしたことが確認されています。

研究チームは
次の段階として、

実際に人間の体での効き目を確かめる
臨床実験を準備しているとのこと。

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抗体薬は
ウイルスの増殖を直接防ぐ働きがあり、
ワクチンとは違って

感染後にも
治療薬として使うことが可能です。

なお、
今回の研究成果は
5月5日に学術雑誌「Cell」に
正式に掲載されたのですが、

研究者たちは
先立って3月に
プレリリースをオンラインで公開しており、

事実上
「最初の抗体薬の一つ」
となったと述べています。

時間経過と共に
抗体薬の開発競争は
激化しているようです。

人間には作れない
スマートなウイルス認識部位

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実験ではまずラマに
SARSとMERSのワクチンを与えることからはじまりました。

新型コロナウイルスは
SARSとMERSの近縁であるために、
新型コロナウイルスに対しても
効果のある抗体を
ラマが作ってくれると考えたからです。

研究者の予想は当たり、
ラマが作った重鎖抗体は
新型コロナウイルスに対して
高い効果がありました。

次に研究者は

ラマの抗体の
先端部分の構造を解読して、

先端部分だけの
ナノボディー(VHH-72)を作りました。

上の図のように、

人間の抗体は
2つの先端部分が合わさって
一つの抗体を認識する必要がありますが、

このラマの作る重鎖抗体の
先端部分(ナノボディー)は、
単独でもウイルスが認識可能です。

そのため、
ナノボディーと
他の抗体のパーツを組み合わせることで、

あらゆる種に対しても効き目のある抗体を
作ることが可能となります。

実験では
ナノボディを
人間の抗体のFc部分(根元の抗原提示部分)と結合させる
合成抗体がつくられました。

この合成抗体は
新型コロナウイルスに結合して
直接的に感染を妨害する以外にも、
免疫システムを活性化させる働きが期待できます。

もしラマが絶滅していたら
ナノボディーも利用できなかった

ラマはナノボディーの元となる抗体を作れるが、
ヒトやネズミやウサギはナノボディーを作れない

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今回の研究では、
人間以外の動物の抗体特性が、
人間にとっても役立つことが判明しました。

このことは、
種の保護の重要性を教えてくれます。

というのも、
もし単独でウイルス(抗原)を認識する鎖をつくれる
ラマなどの生物が絶滅していたら、
このナノボディーからなる抗体は
製造できなかったからです。

人類は
数多くの種の絶滅を引き起こしていますが、

種が一つ絶滅するたびに、
有用な医療資源も失っています。

今後もし、
過去に絶滅した動物の抗体だけが効くウイルスが現れたら
取り返しがつかなくなります。

そうならないためにも、
自然と動物を大切にしていきたいですね。

研究内容は
テキサス大学のダニエル・ラップ氏らによってまとめられ、
5月5日に学術雑誌「Cell」に掲載されました。

https://nazology.net/archives/59643

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