【ポーランド】大統領選挙の投票所が開かれず、投票者数ゼロで、やり直しとなる。
(2020年05月10日)ポーランドで10日に予定されていた大統領選挙は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で引き起こされた政治危機により投票所が開かれず、投票者数がゼロという異例の事態となった。
大統領選の実施をめぐり右派与党「法と正義(PiS)」政権と野党は合憲かつ感染予防の観点から安全な事態打開策を見いだせず、選挙は公式には延期も中止もされないままになっていた。
10日夕、選挙委員会は有権者が「どの候補者にも投票できなかった」ため、新たな投票日を2週間以内に決定するよう議会議長に求める決議を採択した。投票は日程の公表から60日以内に実施する必要がある。
野党「民主左翼連合(SLD)」のトマシュ・トレラ(Tomasz Trela)氏ら2人の議員は、通常なら投票所となる学校に手製の投票用紙を持って現れ、なぜ投票できないのかと疑問を投げかけた。
トレラ氏は記者団に対し、「投票所が閉鎖されているということは、誰かが選挙を中止したということだ。しかし誰が何を根拠に中止したのか不透明だ」と述べた。
ワルシャワを拠点に活動する政治学者、スタニスワフ・モツェク(Stanislaw Mocek)氏はAFPに「われわれはひどくばかげた政治的混乱の中にいる」と国民の間で広がる混乱や懸念を代弁し、「(政府は新型コロナウイルス流行を)自然災害と宣言し、大統領選を(憲法に従って)適法に延期すべきだった」と述べた。
■郵便投票も実現せず
右派与党PiSは、新型コロナウイルスの感染状況は自然災害と宣言する必要があるほど深刻ではなく、さらに、もし自然災害と宣言すれば、ポーランド国内で活動している多国籍企業が多額の補償を要求し、政府が支払いに追われる可能性があると示唆していた。
リベラル派の野党はロックダウン(都市封鎖)実施中に自由、公正、安全な選挙は不可能だとして大統領選の延期を要求してきた。
野党は、世論調査で国民の4人のうち3人が大統領選の延期を求めていたにもかかわらず政府が5月10日の投票実施を決めたのは、早期の選挙が現職アンジェイ・ドゥダ(Andrzej Duda)大統領に有利になるとPiSが考えたからだと主張している。
PiSが多数を占める下院は3月、感染への懸念を払拭(ふっしょく)して5月10日に投票を行うため、「60歳以上または投票日当日に強制隔離下または自宅などでの隔離対象となっている」有権者に、郵便投票を認める選挙法改正案を可決した。
しかし野党が多数を占める上院はこれを否決。政府は選挙の準備期間を設けることができなくなった。
PiSなど連立与党は先週、「投票は実施されないとみられることから、2020年5月10日以降、最高裁が選挙を無効化し、議会議長が最も早く選挙実施が可能な期日を公表する」とする声明を発表していた。
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