【HBO】月収マイナス2万円!ある技能実習生の明細書

(2019年08月23日)

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ここに一枚の給与明細書がある。

ある技能実習生が
実習先の企業から受け取った、
平成30年8月分の給与明細である。

そこに記載されているのは
「出勤日数1日」、
「支給合計7141円」、
「控除合計2万7316円」、
「差し引き支給額マイナス2万0175円」……。

そう、これは
給料がマイナスの給与明細なのである。

技能実習の現場で
何が起きているのか。

7月下旬、
ベトナム人技能実習生・留学生を支援している
東京都・港区の浄土宗寺院「日新窟」で、
実習生2人を取材した。

「私たちは
仙台の内装・建築会社で
働いていました。

これはその時の
給与明細書です」

「会社は嘘つきです。

今はもう日本人が怖い」

こう話すのは、
ベトナム人技能実習生の
グエンさん(25歳男性・仮名)と
ホアンさん(24歳男性・仮名)。

2人はベトナム南部のホーチミン市出身で、
本国の日本語学校で
机を並べて勉強した仲だ。

彼らは2016年に来日後、
仙台の内装・建築会社の
実習先に配属された。

だが、そこで待っていたのは
「奴隷労働」だった。

まず賃金である。

2人は同社で1年半~2年近く働いたが、
この間

「給料をいくらもらったかは
分からない」

という。

会社が給与明細書を
発行してくれなかったからだ。

昨年、何とか頼み込んで
給与明細書を発行してもらったが、
そこには衝撃の数字が記載されていた。

ホアンさんが
昨年3~4月、6~8月分の給与明細書を持っていた。

3月分給与は
14日出勤で
支給額は8万2362円、

4月分は
17日出勤で
8万7627円だった。

しかし実際の出勤日数は
25日以上だった。

会社側に抗議したところ、
さらに出勤日数と支給額を減らされた。

その結果、
6月分は1日出勤で6948円、
7月分は8日出勤でマイナス4220円、
そして冒頭で紹介したとおり
8月分は1日出勤で
マイナス2万0175円だった。

さすがにマイナス分は徴収されなかったというが、
支給額がマイナスの給与明細書など前代未聞である。

なぜ5月分の給与明細書がないのか。

ホアンさんの記憶は定かではなかったが、
支給日を確認すると
4月27日に3月分給与が、
5月27日に4月分給与が支払われたあと、
6月27日に5月分給与を飛ばして
6月分給与が支払われていた。

さらに詳しく見ると、
6月分給与が6月27日に支払われたあと、
7月分給与は7月27日ではなく
8月27日に支払われていた。

おそらく5月分給与は
元から支払われておらず、
その帳尻を合わせるために
7月27日の給料日はなくなったのだろう。

いずれにせよ、
ホアンさんが昨年3~8月の6カ月でもらった給与は
手取りで17万6937円、
マイナスを加味した額面で15万2542円だった。

毎月20日以上、
つまり半年間で120日以上働いて
給料が18万円にも満たないとすると、
日給は1500円以下である。

「低賃金」どころの話ではない。

2人は食費にすら事欠き、
寮の近くに住む他のベトナム人に
食料を分けてもらったり、
畑の道端に捨てられている野菜を
拾って食べたりしていたという。

「出勤日を1日にされてから
もう一度抗議したら、
部長からもの凄く怒られました。

その後、『切符を買ったからベトナムに帰れ』と言われました。

監理団体にも連絡しましたが、
何も言いませんでした」(ホアン)

その後、
本制度を統括する外国人技能実習機構(通称「機構」)が査察に入り、
2人は突然仙台の実習先から
群馬の監理団体に預けられたという。

「実習先の会社からは『解雇だ』と言われ、
機構と監理団体からは
『技能実習は活動停止だ』と言われましたが、
詳しい事情はよく分かりません。

とにかく何も分からないまま
会社を辞めて群馬に行きました」(グエン)

本誌はこの点について
事実確認をするために機構へ問い合わせたが、

「個別の事例については情報を公開していません」

の一点張り。

当該企業にも取材を試みようとしたが、
すでに倒産していた。

https://hbol.jp/199986

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