遺志なき移植、十分な議論を(声)

(2000年09月09日)

011392000年09月09日朝刊オピニオン201400521文字大学講師 打出喜義(金沢市 47歳)
臓器移植を行う際の問題点である、移植を受ける患者(レシピエント)と臓器提供者(ドナー)の数の不均衡を解消する目的で、「十五歳未満を含めて、本人の同意なしに(家族の同意さえあれば)ドナーとなれる」よう、法改正を求める動きがあるとのことですが、この改正については十分な論議が必要だと思われます。
脳死での移植に際しては、ドナー本人の人間愛に満ちた、確固たる遺志があればこそ、医療側も遺志を成就させるべく努力するし、レシピエントもその遺志によっていやされるのだと思います。
愛する人が「死」にひんした際、本人の同意もないのに、残された家族がどんなに理知的な人々の集まりであっても、その臓器を脳死段階で提供するといった心の動きになるものでしょうか。まして十五歳にも満たない子供がそうであった場合は、なおさらではないでしょうか。
移植医療に携わる方々の熱情と、現在の医療では移植しか助かる道がないと言われている方々の静かな祈り、ドナーとなろうとする方々の深い人間愛、それらが程よく融合して初めて、健全な移植医療が成り立っていくのです。本人の遺志がない場合、臓器提供への協力要請には十二分の思慮が必要だと思います。