【朝日新聞】驚くほど真っ黒だった「ノリ弁」 入管民営化に漂う不信。

(2020年05月20日)

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外国人専門の
中堅の人材派遣会社が、

不正な申請で
多くの外国人を
呼び寄せているのではないか――。

そんな情報をもとに、
朝日新聞の取材班が
本格的に動き出したのは
昨年夏のことだった。

この人材派遣会社は、
出入国在留管理庁(入管庁)の
名古屋出入国在留管理局(名古屋市)の
窓口業務を担っているという。

外国人入国で虚偽の契約書提出か 入管業務担う派遣会社

https://www.asahi.com/articles/ASN5M6QSTN5MUUPI001.html?iref=pc_extlink

私は驚いた。

入管といえば、
日本で働く外国人の入国審査をしたり、
在留資格の延長の可否などを判断したりする「役所」である。

その窓口の仕事をしているのが
公務員ではなく
民間企業の人たちなのだという。

しかも、
外国人専門の人材派遣会社。

外国人受け入れの利害関係者が
役所の窓口の仕事をしているとは、

外国人問題を取材してきた私にとって
思いもよらないことだった。

次から次へと疑問が浮かんだ。

なぜ役所の仕事を、
公務員でなく
民間企業の人たちがやっているのか。

どうして人材派遣会社が
その役所仕事を
請け負うことになったのか。

外国人受け入れの当事者である人材派遣会社に
公的な仕事を任せて大丈夫なのか。

不正の有無を調べる取材と並行して、
これらの疑問を解くための取材を始めた。

相手は役所である。

ふつうに取材していけば、
それほど時間をかけずに
疑問は解けるだろうと思っていた。

だがそれは甘い期待だったと、
後になって思い知ることになる。

最初の疑問。

窓口業務を
なぜ民間に任せることになったのか、

経緯を調べた。

ルーツは
小泉政権時代(2001~06年)にさかのぼる。

小泉政権の代名詞といえば
「郵政民営化」だが、

民営化したのは
郵政だけではなかった。

当時、
小泉純一郎首相のブレーン的存在だった
経済学者の竹中平蔵氏(現パソナグループ会長)が
旗振り役となり、

さまざまな行政サービスの
民営化を進めたのだ。

そこで登場したのが
「市場化テスト」というやり方だ。

公共サービスの担い手を決める入札に、
役所(官)と企業(民)が
対等な立場で参加するしくみで、

官民を問わず、
より効率的に仕事ができるところに
業務を任せるというものだ。

やみくもに民営化してしまうのではなく、
「テスト期間」を設けることで
官民を競わせながら、
うまくいくところは
民間に任せていくという狙いだ。

入管の窓口業務の民営化も、
この「市場化テスト」をつかって進められた。

波乱続きだった「入管民営化」

ここで
入管という役所の組織図を
おさらいしておく。

法務省の管轄下にある入管庁の下に、
全国8カ所にある地方入管がぶら下がっている。

この地方入管が、
在留資格の更新などの実務を担う。

地方入管のうち、
東京、名古屋と大阪の3カ所について、
窓口業務などの民営化をめざした市場化テストが
11年度に始まった。

「入管民営化」のプロセスを調べてみると、
じつは波乱続きだった。

東京入管の窓口業務を
最初に請け負った事業者は
2年目に経営破綻(はたん)し、

その後は
国の直営、
さらに公益財団法人である入管協会と、
担い手は
めまぐるしく変わった。

14年度に受託した民間企業は
「取扱件数が想定より多い」
と撤退してしまった。

国側は「3年契約」をもくろんでいたが、
単年度ごとの契約にならざるを得なかった。

こうしたゴタゴタにもかかわらず、

民営化の是非を判定する国の
「官民競争入札等監理委員会」は

入管窓口業務の民営化を
「妥当」と判断。

19年度からは法務省が
業者選びの入札や
契約をするようになった。

不正申請が疑われる人材派遣会社が、
名古屋入管の窓口業務の委託先を決める入札で落札したのは、
まさにこのタイミングだった。

19年度からは、
入札のやり方も変更されていた。

入札価格だけでなく
企業の業務遂行能力などを
総合的に判断して決める「総合評価方式」から、
最低価格を提示した企業が
そのまま落札する「最低価格方式」に変わったのだ。

価格だけで決まるしくみは、
取材対象となった人材派遣会社のような
比較的規模の小さい業者にとって
チャンスといえる。

そこで新たな疑問が浮かぶ。

なぜこのタイミングで
入札方式を変えたのだろう?

名古屋入管に取材を申し込み、
電話やメールで問い合わせてみたが、
よくわからない。

46枚のノリ弁

入管業務民営化の
裏にある真実に迫ろうと、

取材班の藤崎麻里記者は
その一部始終を調べるため
情報公開請求をしました。

しかし、今度は
役所が公開した書類そのものに
疑念を持たざるをえない事態が生じます。

その後のやりとりを詳報します。

https://www.asahi.com/articles/ASN5M6WJCN5MUUPI005.html

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