【経済構造調整特別部会】最終報告書として、「新前川レポート」を発表。

(1987年04月23日)

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1987年4月23日,
最終的な部会報告(新前川レポート)が発表された.

概要は以下の通りである.

まず,

「今,我が国は
膨大な経常収支黒字を抱え,
各国との経済摩擦は
益々激化する兆しも見えている.

我が国の大幅な経常収支不均衡の継続は,
経済運営においても,
また世界経済の調和ある発展という観点からいっても,
看過できない状況である.

もとより,この現象は
相互依存関係にある世界経済の中で生じているものである.

したがって,
経常収支不均衡の是正は
我が国一国の政策対応のみで達成することはできず,
米国の財政赤字削減を始めとする
国際的な政策協調が不可欠である.

しかし,我が国は
自由貿易体制に
大きく依存している国として,
また,世界の GNP 一割国家,
世界最大の債権国として,
国際的に調和のとれた対外均衡の達成と
国際社会への積極的貢献を図ることによって,
率先して保護主義を防あつし,
自由貿易体制を守らねばならない」

とされ,
「前川レポート」に比して
保護主義の脅威が強調された.

さらに,

「他方,国内に目を転じると,
低い居住水準,高い生計費,
長い労働時間に象徴されるように,
必ずしもこれまでの経済成長の成果が
生活の質の向上に反映されているとは
言い難い状況にある.

さらに,円高の下で,
現実の為替レートと
我々の生活実感からみた円の値打ちとの
ギャップが拡大している.

このため,国民は
強い円が生活の質を高めたのか
といった疑問を強めている.

また,一昨年9月以降の円高は,
種々の摩擦を生んでおり,

国民の間には
我が国経済の将来について
不安感が生じている.

こうした中で
構造調整を進めるためには,
それが究極的には
国民生活の向上につながるとの
国民の理解が不可欠である」

との記述が新しい.

構造調整のための方策として
掲げられた項目は,

内需拡大,
労働時間短縮,
国際的に調和のとれた産業構造,
雇用への対応,
地域経済への対応,
世界への貢献

の6点である.

内需拡大の中で重視されたのは,
住宅の質的改善,
社会資本整備(民活による大型プロジェクト,
都市リフォーム,
地域資源活用型プロジェクト,
情報インフラの整備等),
土地政策
(農地と宅地の線引き見直し,土地の高度利用,低・未利用地活用など)
である.

また,産業構造の転換には摩擦を伴うため,
構造調整を円滑に進めるためには
中長期的に GNP 全体の4% 程度の
中成長が必要であるものと認識されていた.

前年4月の「前川レポート」が
抽象的な表現が多いとの評価を受けていたことから,
「新前川レポート」では,
市街化区域内農地の優遇税制の是正,
国公有地などの有効活用,
地方中核都市の育成と
東京圏一局集中是正,
年間1,800労働時間の早期実現,
建設業での外国企業参入促進,
自主流通米の拡大と集荷や流通段階での
競争導入などの点で政策の具体化が進められた.

「新前川レポート」を受けて,
1987年5月21日,
政府・自民党の経済構造調整推進本部は,
緊急経済対策などを通じて
「新前川レポート」を逐次実施することを確認した.(p.200)

http://www.esri.go.jp/jp/prj/sbubble/history/history_01/analysis_01_02_03.pdf

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