南米チリで軍事クーデター (ピノチェト政権へ)

(1973年09月11日)

1973 年、9 月 11 日、チリのアジェンデ政権は、
軍と警察のクーデターによって転覆され てしまった。

あの「同時多発テロ」と区別するために
「Little September eleven」と呼ば れている出来事だ。

アメリカの大企業や CIA、キッシンジャー国務長官などの後押しを受けた
チリの反共勢力であるビジネス・エリート(裕福層)が軍部と結託し、
民主主義的に 選択された社会主義政権を力で捻じ伏せたのだ。

死者 4 万人以上、行方不明者2千人以上 という殺戮が繰り返され、
結果として多くの知識人を含む 100 万人規模の人達が国外へ亡 命した。

こうしてチリでは、ピノチェト将軍による軍事政権が誕生した。

アメリカで新自由主義 を説き、
シカゴ学派と呼ばれる経済学の一派を築いていたフリードマンの弟子達から成る、
後に「シカゴ・ボーイズ」と呼ばれる政策集団の推奨する経済政策を、
ピノチェトは積極 的に取り入れ、「新自由主義」による経済政策を実行したのだ。

シカゴ・ボーイズのメンバ ーに
チリからの留学生を含むラテンアメリカ出身者が多かったことから、
チリで起きた革 命は絶好の好機となった。

実は、アメリカ政府は、南米で共産主義化が進むのを恐れ、
南 米各地から呼び集めたエリート達に、資金援助をし、
シカゴ大学のミルトン・フリードマ ンの下で、
新自由主義経済を学ばせていたのだ。

途上国のエリート達を援助し、
アメリカ の国益にとって有利なイデオロギーを学習させ、
彼等の祖国に返すという
教育による方向 付けがなされているのである。

アメリカに有利なイデオロギーの枷を嵌められて帰国した 彼等は、
彼等の祖国の内部から、アメリカの外交政策に呼忚する形で、
親アメリカ的国家 を構築していく。

こうして「新自由主義」経済学者として育成された「シカゴ・ボーイズ」 の政策に従って、
ピノチェトは、組合交渉権を違法として実質上労働組合を解体し、国営 企業を売却し民営化し、
財産や営業利益に対する税金を撤廃するなどの規制緩和を行い、
年金制度の民営化を行い、保護貿易を撤廃することで貿易の自由化を強行し、
外国からの 直接投資を招き寄せたのだ。

水産物や森林資源などが民間に開放され、
先住民の抵抗も虚 しく、乱獲や乱伐されるに任せてしまう。

イラクの基幹資源の石油が残されたように、
チ リの場合も、銅の収益が独占的に国家の収益として残され、
国家運営の資金とされ、国家 指導者の懐を潤すことになるのだ。

これによって一時的に財政黒字が齎され、チリは好景 気となった。

こうしてチリの国家経済は潤い、「チリの奇跡」と騒がれたのだが、
これはま さに一過性のもので、数年の内に対外債務が
国家を破綻に追い込むほど拡大してしまって いた。

実は、この「チリの奇跡」というフレーズはフリードマン自身の考案で、
これによ って「新自由主義」が売り込まれていったのだった。

ピノチェトは、シカゴ・ボーイズのアドヴァイス通り、
国営銀行を安く売却し、銀行は 海外の投機家達の手に渡り、
彼らは買収した銀行から、製造企業を買い漁り、
その資産を 担保にして、さらに外国人投資家達に資金調達を行った。

銀行の準備金は、本当はろくに 無かったわけで、
結局は自分達が買い漁って傘下の企業となった製造企業の
中身の無い証 券の類ばかりだったのだ。

こんなことをしていれば、当然ながら、
やがて債務不履行に陥 るのは必定だった。

実際に、この銀行が債務不履行になると、チリの弱体化が始まる。

GDP という観点から 見れば、
国家全体としては経済的に潤っているかのように見えるわけなのだが、
「チリの奇 跡」と騒がれた陰では、
拡張してしまった貧富の格差に苦しむ人達が、明日は餓死するか
もしれないという現実を生きていたのだ。

「新自由主義」構造改革が進む中、
貧困地区を支 えていた、地域診療所のような公共施設や
民衆組織が、解体してしまった。

実際に、ピノ チェトが政権を掌握した年である 1973 年の
チリの失業率は 4.3%だった。

にもかかわらず、 「新自由主義」革命の後、
10 年後の 1983 年には、22%に達している。

貧困層の割合も、 政権当初の 20%から、
好景気であったとされる 1987 年には、2 倍以上にも跳ね上がり、
国 民の半数近くの 45%が貧困層になったのだ。

このことは、まさに、ほんの一握りの人達に
富が集中していることを表している。

結局、チリの一部の富裕層と外国資本が莫大な富を 享受し、
国民の半数近くが貧困に喘いでいたのだ。

http://www.yasuda-u.ac.jp/course/business/basic/letterzine/images/a88642d5b13a94decdaf241c9396e0db0a561e56.pdf

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