政策ウオッチ)臓器移植法改正 放置9年、速く…だが熟慮を

(2009年06月11日)

004492009年06月11日朝刊政策総合00700447文字朝日新聞が5月に実施した臓器移植法改正を巡る国会議員アンケートの回答率は32%と低かった。議員会館を回ったら、ある議員は質問用紙を手にうなった。「考えている。もう少し待てないか」
低い回答率は悩む議員の多さの裏返しだろう。党議拘束をかけず議員個人が賛否に責任を負う特殊な議題。「脳死は人の死か」との重い哲学的判断まで要求される。
国内で移植を受けられず死亡する人は心臓病だけで年に数百人。どの国も提供が少ない。日本人が海外で移植を受ければその分、移植でしか助からない現地の患者の機会を奪う。世界保健機関(WHO)幹部がくれたメモには「他国での移植はすべて(撲滅すべき)移植ツーリズム」とあった。
「脳死は一律に死」という考え方に立てば、臓器提供できる人の範囲は増す。ただ、脳死は、体も温かい、見慣れぬ「死」だ。それとの向き合い方を提示する四つの法改正案に、悩むのは当然だ。
97年施行の現行法にある3年後の見直し規定は、放置されもう9年。速やかに、だが熟慮して、結論を出すべきだ。(長野剛)

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