【拓銀】カブトデコムを倒産させることを決議。

(1992年10月26日)

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拓銀本店内で
山内頭取はじめ 少人数の幹部が集まり,
経営会議を開いた。

そこで,対外的にはカブトデコムの支援を装いつつも,
内部では数カ月後にはカブトデコムを倒産に導こうとする
二枚舌の対応を取ることを決定した。

不良債権の処理の仕方として,
多くの都市銀行においてそうであったが,
例えば長銀では「事 業推進部」といった
専門に不良債権を処理する部門を新しく作った。

ところが,その部門は
不良債権を根本的に処理するためのもののではなかった。

融資先企業が手掛けていたリゾート開発や
ホテルなどの建設途上の案件をそのまま凍結すれば,
そこにつぎ込んだ融資額は
すべて不良債権として公表しなければならなくなる。

それを避けるためには,
つまり不良債権の公表額を過少にみせるためには,
その案件を完成させ,
その上で営業するか処分するかを決定すればよい
ということであった。

そして,その案件を完成させるために
またも膨大な資金がつぎ込ま れたのである。

不良債権を処理するという
後ろ向きの業務であるにもかかわらず,
「事業推進」 という名称は奇妙に思われるが,
今述べたように
不良債権の処理を「不良債権の事業化を推進 する」という形で
行ったという意味では
事業内容にふさわしいて名前であった。

この考え方の背景には,
そのうち景気はよくなり
地価も上昇するといった
根拠のない楽観論 があった。

ところが,その後も景気はよくならず
地価も下落を続けた。

その結果,
完成した案件は,赤字経営となり,
売却しようにも採算の合わない
低価格でしかないという状況であった。

つまり,不良債権を処理するどころか,
逆に不良債権を雪だるま式に増やしたにすぎない。

拓銀では,不良債権を処理するための新しい部門は作られなかったが,
処理の仕方はよく似ていた。

拓銀は,カブトデコムやソフィアが手掛けていた案件を凍結せずに,
完成させるため に融資を続けた。

http://r-cube.ritsumei.ac.jp/bitstream/10367/1736/1/be415_01hattoriyasu.pdf

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