臓器移植法改正4案、きょう採決

(2009年06月18日)

004402009年06月18日朝刊政策総合00601101臓器移植法の4改正案が18日の衆院本会議で採決される。臓器提供拡大に道を開く「脳死を人の死」とする抜本改正案には慎重論も根強い。多くの政党が「個人の死生観にかかわる」として党議拘束をかけない。いずれの案も可決のめどは立っておらず、否決、廃案となる可能性もある。
衆院議院運営委員会は17日の理事会で、臓器移植法改正4案の採決について、「A→B→C→D」案の提出順で行うことを決めた。ただ、否決後に廃案にするかどうかの取り扱いは結論が出ず、18日の採決ぎりぎりまで調整することになった。
有効投票総数の過半数の賛成を得た案が出ると、残りの案は採決せず、廃案になる。逆にA~C案が否決されれば、残りのD案が有利になるとの批判もA案提出者などから出ている。
衆院議運委では、衆院規則147条を根拠に、全案が否決された場合に「廃案にしない」と議決し、厚生労働委に差し戻して審議を続ける案を検討している。厚労委で新たな案を作り直す可能性もあるが、調整は難航しそうだ。

●参院で独自案 提出の動きも
臓器移植法改正をめぐり、参院の民主、社民両党を中心とした有志議員が17日、衆院で改正4案のいずれかが可決されて参院に送られた場合、参院独自の案を提出する考えを明らかにした。
独自案の提出予定者は、民主党の円より子、森ゆうこ両氏ら移植医療の要件緩和に慎重なC案支持の議員。C案の一部を修正し、子どもからの臓器提供のあり方を有識者で検討する「こども脳死臨調」の設置を求める内容を盛り込む方針。

◆各案提出者それぞれの訴え
採決を前に各案の提出者の主張を聞いた。
脳死を一律に人の死とするA案の山内康一氏(自民)は「A案では、提供の意思を記したカードがない時も家族の承諾で提供でき、臓器提供は増える。現在は移植が必要な患者は毎年、数千人亡くなっている」と訴えた。
提供できる年齢を15歳以上から12歳以上に引き下げるB案の石井啓一氏(公明)は「脳死は人の死でなく、臓器提供は本人の自己決定が必要だ」。虐待対策や小児の脳死判定基準の検証などを進める必要性を指摘した。
C案は脳死の定義を厳格化する。阿部知子氏(社民)は「臓器提供数が少ないから法改正というのはおかしい。国民の意見を聞く場を設けるべきだ。C案は脳死の原因疾患の確定や治療を尽くすことを脳死判定の要件に加えた」と強調した。
根本匠氏(自民)は15歳未満の人から家族の同意などで提供できるようにするD案を出した。「基本は本人意思を尊重する現行法の精神。子どもは意思を示す能力がなく、人格形成に責任と義務を持つ親が判断する」。大人からの提供を増やすことも目指す。

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