三洋証券が倒産。(翌日、コール市場でデフォルトが発生)

(1997年11月03日)

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準大手証券である三洋証券が
東京地裁に会社更生法適用を申請し倒産した。

その結果,
翌日にはコール市場でデフォルトが発生した。

コール市場は,
金融機関同士が資金を融通し合うインターバンク市場の一種である。

インターバンク市場でのデフォルトは
金融機関が借りた金を返さないということであり,
そんなことは絶対に起こらないという大前提の下で
金融市場は成り立ってきた。

それゆえ,このデフォルトの発生は
金融市場における大混乱を引き起こすこととなった。

この事件は,
他の金融機関が三洋証券に貸していた
わずか 10 億円ほどの無担保コールが
返済不履行となったことから始まった。

金融当局も「わずか 10 億円」と
デフォルト発生を軽視していた。

コール資金は
翌日には返済されるものであるから,
会社更生法適用の申請は,
即コ ール資金のデフォルトを意味した。

当然そのことは,
旧大蔵省も日銀も当時知っていた。

知らなかったのは,「わずか 10 億円」であろうと,
インターバンク市場における初めてのデフォル トが及ぼす
金融市場への影響の大きさについてであった。

この事件が発生して以降,
インターバンク市場での資金の出し手は,
信用不安から極めて慎重になった。

つまり,金融機関が
金融機関を信用しなくなってしまったのである。

これは金融政策運営上の
痛恨の失策だったと言える。

そして,拓銀のように
信用力が低下している金融機関には
資金を貸さなくなってしまった。

こうして拓銀は
ますますコール市場で資金を調達することは困難になった。

預金流出による資金繰りの悪化を,
コール市場での資金調達で補っていたのであるから,
このことにより
いよいよ資金繰りの悪化は,
拓銀を窮地に追い込むことになった。

11 月 14 日(金曜日),
その前日まで拓銀の主幹事であった山一証券など複数の金融機関が,
市場を通じて拓銀に資金を提供していた。

ところが,この日は
無担保コールの大半が消えてしまった。

折しもこの日は,
日銀が金融機関に預金の一定割合を強制的に預け入れさせる準備預金を
積み立てる最終日であった。

拓銀は日銀準備預金を確保する必要に迫られていたが,
準備預金が目標額に対して不足する事態に陥った。

拓銀は完全に市場から見放されることになっ た 30)。

http://r-cube.ritsumei.ac.jp/bitstream/10367/1736/1/be415_01hattoriyasu.pdf

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